地球温暖化対策

海底下に二酸化炭素(CO2)を貯留する「海底貯留」という方法が、いま注目を集めています。大気中の二酸化炭素は地球温暖化の主な原因であると考えられるため、二酸化炭素を地中に貯留することは、人類が直面する環境問題のひとつである二酸化炭素の排出量を減らす上で非常に有望な戦略だと考えられています。

世界で2兆トン

二酸化炭素の地中への注入は「石油増進回収法」(EOR)と呼ばれ、天然ガスの地下貯留や石油増産に活用されています。海底貯留は、環境への貢献を目的とする技術です。

化石燃料を燃やす発電所や巨大産業施設などから排出されるガスを回収し、ガス状のまま分離することが二酸化炭素の海底貯留の基本です。これをタンカーやパイプラインで海へ運び、海底下1,000メートル以上の深さにある帯水槽(水を含んだ多孔質の岩石層)に圧力をかけながら注入していきます。

帯水層の上には、キャップロックと呼ばれる不透水性の岩石層があります。これが帯水層の蓋として機能し、膨大な量の二酸化炭素を帯水層から逃さず、長期間にわたり蓄えることが出来ると考えられています。現在、日本や欧米では、海中だけでなく地中深くにも、この方法で二酸化炭素を回収しています。これにより、2兆トンもの二酸化炭素を蓄えることが可能だと言われています。

経験豊富な日本

ここ日本の海底や海底下には、最大で900億トンもの二酸化炭素が蓄えられている可能性があるということです。これは日本の二酸化炭素排出量の70〜80年分にも相当します。日本には天然ガスの地下貯留やEOR技術に関する豊富な経験とノウハウがあるため、二酸化炭素の貯留分野における取組みは非常に実用性が高いと考えられています。

2003年からは、新潟県長岡市にある財団法人「地球環境産業技術研究機構(RITE)」が、深さ1,100メートルにある帯水層に二酸化炭素を注入する実験を開始しました。これは、二酸化炭素の隔離方法としては日本初の試みでした。2005年、研究者たちは1万トンの二酸化炭素を大気放出することに成功しました。新潟県中越地方では2004年10月にマグニチュード6.8の大地震が発生しましたが、蓄えられていた二酸化炭素にはほとんど影響がありませんでした。この事実を受け、技術実験は再開されました。

RITEの二酸化炭素貯留グループリーダーである村井重夫 氏は、「日本の特殊な地質条件下でも二酸化炭素注入は可能であることを示せました。更に、我々のモニタリング活動に基づいたコンピュータシミュレーションにより、今後1,000年間に二酸化炭素がどう動くかを把握することも出来ました」と述べました。